◆オルゴール編曲について
『オルゴール編曲』あまり聞き慣れない言葉だと思います。
曲をオルゴールにするためには、必ず『オルゴール編曲』を行う必要があります。
YouTubeなどによくある「オルゴールアレンジ」や「オルゴールBGM」などの音のほとんどは実際のオルゴールではなく、オルゴール風の音を使って自由に編曲された「オルゴール調の電子音」で、実際のオルゴールは、あのように自由な編曲はできません。
オルゴールにはとても厳しい制約があり、その制約の中で編曲を行います。
以下、おおまかですがオルゴール編曲についてご説明いたします。
◆「オルゴール編曲」は一般の音楽の編曲とは大きく異なります
「オルゴール」という小さな楽器で音楽を奏でるためには、さまざまな制約があります。
そのため、オルゴール編曲では「作曲(編曲)技法」と「設計技術」の両面を駆使してメロディーを助ける「伴奏と和音」を考えます。
器楽曲の編曲にはそれぞれの楽器の特性を理解している必要があるのと同じようにオルゴールの編曲でもオルゴールを一つの「楽器」ととらえ、その特性を十分熟知している必要があります。
例えばピアノで弾くときれいなハーモニーがオルゴールメカでも同じようにきれいに響くとは限りません。
オルゴール独特の「響き」「共鳴」なども理解し、よりオルゴールで美しく聴こえる音の組み合わせを追求します。
(オルゴールは音の「強弱」を出せないため、これらの表現も大変難しいものがあります。)
この編曲作業は、当店の編曲担当によって行われ、仮にプロの作曲家の方からのご依頼の場合でも、オルゴール編曲については当店にお任せいただいています。
◆オルゴールに入る曲の長さ(「編入部」といいます)について
オルゴールメカ(18弁、23弁、30弁など)のタイプによって異なります。
例えば18弁タイプの場合、目安として「4分の4拍子」の曲では「8小節入る」とされていますが、必ずしもそうとは限りません。
実際にはシリンダー(ドラム部分)1回転が約15秒なので、約15秒分の音楽が入ります。
従って、この15秒の中で演奏(鳴奏)できる長さになります。
そのため、ゆっくりした曲などは8小節分入らない事もあります。
中には「曲の速度を速めても良いから長くいれてほしい」というご要望をいただくこともありますが、それもケースバイケースで、可能な場合とそうでない場合がありますので、そのあたりはご相談しながら進めていきます。
当店ではお客様から新規に編曲のご依頼を受けた場合、編曲担当がお客様のご希望を十分にお伺いし、事前に検討し、その結果、どのメカタイプであれば編曲可能かをお知らせし、お客様にご検討いただきご納得いただいてからご注文いただいています。
◆櫛歯=振動板の配列について
18弁、23弁、30弁は「18N(エヌ)」、「23N(エヌ」、「30N(エヌ)」とも呼ばれますが、オルゴールのタイプ名に付く「N」は、英語で「Note」=「音」の意味で、数字は櫛歯の弁の数を表しています。
オルゴールでは櫛歯の一本一本がピアノの鍵盤にあたる部分になりますが、その音の並び方はピアノのように♪ドレミファソラシド♪とはなっていません。
オルゴールではその曲に必要な音だけを抜き出して弁に当てはめていくので、♪ドミソラシ♪などとなっている場合があります。
ここで一番のポイントとなるのは、音を並べる際のルールです。
ある音が連続して使われたり(連続同一音)、近接して使われる場合、その音は1つの弁では演奏出来ません。
オルゴールでは弁をはじいて音を発音するため、はじくことによって振動が生じ、その振動が止まるまでその弁は音を発音することは出来ません。
そのため、振動が止まる前に同じ音を使いたい場合は、同じ音の弁を隣へ用意しなくてはなりません。
このようなルールに従って音を並べていくと、♪ドレミミソララド~♪のように同じ音を2つ、あるいは3つ用意することもあります。
(同一音は3つ並べる事が限界です)
そのため、18N(18音)といっても「18種類の音」が使えるわけではありません。
また、オルゴールのタイプによって並べた音の音域(一番低い音から高い音までの幅)も異なり、18弁タイプの場合は2オクターブ~2.6オクターブぐらいでないと櫛歯の加工(調律)ができなくなります。
その点もふまえて音を選んでいかなくてはなりません。
そして、調律の制約に合わせて調律しますので、曲の調(キー)が原曲と異なる調になるケースも多々あります。
このようにまず曲のメロディーで使われている音を並べていき、そして残りの音を「伴奏弁」として考えます。
時に、伴奏音がとても少ないオルゴールがありますが、これはメロディーで使う音(弁)が多く必要だったために伴奏用に使える音(弁)が確保できなかったためです。
また、連続同一音の音を省略してしまう事がありますが、これは同じ音を3つ並べてもそのリズムが出せない場合や、どうしても必要な伴奏音の確保のために同じ音をいくつも用意できなかったためです。
当店のオリジナル編曲で心がけていること
編曲者は日々、何曲も編曲をしているわけですが、お客様にとっては「オンリーワン」。
その事をいつも忘れないよう心に留め、「オルゴールにして良かった!」と心から思っていただけるような編曲を目指し、取り組んでいます。
また、オルゴールの編曲のご注文は「初めて」のお客様がほとんどです。
どうかご不明な点や不安な事などございましたら、編曲担当までお気軽にご相談いただければ幸いです。